山吹の花の、わけて白く咲きたる、小雨の葉の色も、ゆあみしたる美しき女の、眉あをき風情に似ずやとて、──────────
時────現代。
所────(第一場)修善寺温泉の裏路。
(第二場)同、下田街道へ捷(ちか)路(みち)の山中。
人────島津正(四十五六)洋画家。
縫子(二十五)小糸川子爵夫人、もと料理屋「ゆかり」の娘。
辺栗藤次(六十九)門附の人形使。
候────四月下旬のはじめ、午後。
1923年「女性改造」に発表。初演は1980年、発表より57年、鏡花没後42年目にしての上演となった。
三島由紀夫と澁澤龍彦が絶賛した戯曲としても知られる。